産後パパ育休とは?2022年10月から新たに取れる育休を徹底解説

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2022年10月から新たな育児休業制度「産後パパ育休」が施行されます。
名称から男性のための育児休業であることはイメージできますが具体的にどのような制度なのでしょう。
この記事では今年の育児介護休業法の目玉である産後パパ育休制度について徹底解説します。

産後パパ育休制度の開設の背景

少子高齢化が止まらない日本においてこれからはより一層女性が働きやすい職場勧業づくりの推進が不可欠となります。

共働きが当たり前になりつつある今でも約5割の女性が出産・育児により退職していると言われています。
そしてやはり妊娠・出産を機に退職した理由の一位は「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさで辞めた」が全体の41.5%をも占めております。
出典 令和2年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書

さらに日本の夫の家事・育児関連時間は1時間も満たしておらず、夫の家事・育児時間が長いほど女性が仕事を継続している割合が高く、第2子以降の出産割合も高い傾向にあります。

このことから子育ては女性1人に任せるのではなく、男性も一緒にすることが女性の離職を防ぎ、さらに出生数の増加につながることが予測できます。

つまり人口減少で働き手が少なくなる日本において男性が育児に参加しやすい制度を整えることは非常に大切なことなのです。

しかし男性の育児休業取得率は近年急上昇しているとは言え12.65%(令和2年度時点、令和3年度では13.97%)と約10人に1人しか取れていません。

女性の取得率は80%と近年は横ばいに推移しております。

出典 厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」

これらを背景に男性が働きながら育児休業を取得することが出来る育休制度「産後パパ育休」が法制化されました。

産後パパ育休とは

産後パパ育休の正式名称は「出生時育児休業」といいます。
パパ育休というのはこの制度の対象者が主に男性になるからです。
女性の場合産後パパ育休期間は産前産後休業期間中に該当するため制度を使うことは原則ありませんが養子を養育する場合などは対象となります。

産後パパ育休と通常の育児休業はどちらも育休ですが別の休業となります。

男性は産後パパ育休を取得した後、子どもが1歳になるまで通常の育児休業を取得することが出来ます。

産後パパ育休の対象者

産後パパ育休は原則としてすべての男性が対象となります。ただし下記のいずれかに該当する従業員は対象となりません。

  • 有期雇用の従業員で子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに雇用が終了することが明らかな人
  • 会社が締結する労使協定により産後パパ育休の申し出を拒むことが出来るとされた人
    なお労使協定により申し出を拒むことできるのは以下の人です。
     ①入社1年未満の従業員
    ・②出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    ・③週間の所定路同日数が2日以下の従業員

対象期間と取得可能日数

産後パパ育休は子の出生から8週間までの間で最大4週間取得可能です。
この産後パパ育休は2回まで分割取得することが可能です。
これにより例えば里帰り出産をする場合などで子どもが産まれるときの奥さんを支えるため2週間、出生後落ち着いて自分の家へ帰ってから2週間など事情に応じて休暇を取得し、育児や家事の分担をすることが出来ます。

また仕事の事情から長期では休暇が取りづらいといった場合も仕事の状況を見ながら柔軟に育休を取得することが可能になります。

なお分割して取得する場合は最初の休業の申し出をする際にまとめて申し出ることが原則です。
まとめて申し出がない場合、事業主は2回目以降の産後パパ育休の取得を拒むことが可能です。当然事業主が拒まずに取得を認めてあげることも可能です。

具体的な産後パパ育休期間

出産予定日に子供が産まれるとは限りません。
出産日が出産日と異なった場合の対象期間の取り扱いは以下の通りです。

①出産日と出産予定日が同一の場合 → 子どもの出産日から8週間後まで

(例)  出産日 9月1日 出産予定日 9月1日
産後パパ育休対象期間 9月1日~10月27日

②出産予定日前に子が産まれた場合 → 出産日から出産予定日の8週間後まで

(例) 出産日 8月22日 出産予定日 9月1日
産後パパ育休対象期間 8月22日~10月27日    (出産日~出産予定日分取得期間が増える)

③出産予定日後に子が産まれた → 出産予定日から出産日8週間

(例) 出産日 9月10日 出産予定日 9月1日
産後パパ育休対象期間 9月1日~11月5日  (出産予定日~出産日分取得期間が増える)

産後パパ育休の就業

産後パパ育休では労使協定を締結にすることによって育休期間中に就業することが可能です。
ただし育児休業中は働かないことが原則のため、会社が休業中の就業を認めないことも可能です。その場合は労使協定の締結は不要です。

労使協定については厚生労働省が労使協定例を公表しているのでこちらを活用するのが良いでしょう。
下記URLからダウンロード可能です。

https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F11909000%2F11.doc&wdOrigin=BROWSELINK

休業中の就業についてはあくまでも労働者の申し出に基づくことが原則であり、事業主が一方的に就業可能日の申し出を求めることや労働者の意向に反する取扱いは出来ません

具体的な手続きの流れは次の通りです。

  1. 労働者が就業しても良い場合は事業主に条件を申出
  2. 事業主は申出があった条件の範囲内で候補日と時間を提示
  3. 労働者が同意
  4. 事業主が通知

なおあくまでも育児をするための休業なので就業可能日と就業可能時間には上限があります。

  • 就業可能日→休業期間中の所定労働日の半分
  • 就業可能時間→休業期間中の所定労働時間の半分

休業開始日・休業終了予定日に働くことも可能です。
しかし開始日と終了日に1日中働くことは休業期間の設定の趣旨に反するため、開始日と終了日の就業時間についてはその日の所定労働時間数未満となっています。

例 1週間の所定労働日5日、1日の所定労働時間8時間の労働者が2週間休業し、その間の所定労働日が10日・所定労働時間の合計が80時間の場合
  ⇒就業日数上限5日、就業時間上限40時間、休業開始日・終了予定日の労働は8時間未満とする必要があり

申し出期限

申し出期限は原則休業の2週間前までです。
通常の育児休業の申し出期限は1か月前となっているので申し出についても産後パパ育休はより柔軟になっています。

ただし業務の引継ぎなどを円滑に行うために1か月前までには伝えておいて欲しいという場合もあります。
事業主は以下の雇用環境の整備などについて、労使協定で定めている場合は通常の育児休業と同様に申し出期限を1か月前までとして良いことになっています。

  1. 次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること。
    ・ 雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
    ・ 育児休業に関する相談体制の整備
    ・ 雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供
    ・ 雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知
    ・ 育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員 の配置に係る必要な措置
  2.  育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること
  3. 育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと。

出生時育児休業給付金

産後パパ育休を取得している期間は雇用保険から「出生時育児休業給付金」が支給されます。

支給額

支給額は休業開始時賃金日額×休業日数×67%です。
休業開始時賃金日額とは育児休業開始前6か月間の給料(賞与は除く)を180日で除した金額です。
イメージとしては6か月間=約180日なので1日あたりの給料の67%が支給されるで問題ありません。
こちらは土日などの本来休日であった日も支給されます。

支給要件

出生時育児休業給付金の支給を受けるためには以下の要件を満たしている必要があります。

1.休業開始日前2年間に出勤日数が11日以上ある月が12か月以上あること
2.休業期間中の就業日数が10日以下であること(10日を超えて働いている場合は労働時間が80時間以下であること)

最大10日以下というのは28日間の休業を取得した場合です。
28日より短い場合はその日数に比例して短くなります。
(例)14日間の休業の場合→最大5日(5日を超えて働いている場合は最大40時間)
また産後パパ育休中に働いて得た収入と出生時育児休業給付金の合計が休業前賃金日額×休業日数の80%を超える額場合は超過額が出生時育児休業給付金から減額されます。

申請期間

申請期間は出生日の8週間後の翌日から起算して2か月後の末日までとなっています。
出産予定日前に子が産まれた場合は出産予定日の8週間後の翌日から2か月後の末日までとなります。
なお分割取得している場合も申請は1回にまとめてすることになります。

産後パパ育休中の社会保険料免除

産後パパ育休中は以下の要件を満たしていればその月の社会保険料が本人・事業主負担分ともに免除されます。

  1. 月末に育児休業を取得している場合
  2. 同一月内に育児休業を開始・終了し、育児休業を取得した日数が14日以上ある場合
    (この14日以上の取得については育休中に働いた日数は含みません。)

産後パパ育休中は収入が減少するため社会保険料を払わなくてよいというのは負担が減ります。

なお社会保険料免除期間にも健康保険の給付は通所通り受けられ、また、免除された期間も将来の年金額に反映されます。

まとめ

2022年10月の育児介護休業法の改正はかなり複雑で大きな改正となっております。
育児休業の申し出を不用意に拒んだり不利益な取り扱いした場合、マタハラと捉えられトラブルに発展する可能性があります。
若者の仕事に対する価値観も多様化しワークライフバランスを重視する人も増えています。
育休を取得しやすい職場環境になると風通しの良い魅力ある職場をPR出来、人材の確保と定着に繋がります。
さらに従業員のエンゲージメントが高まれば業績の向上にも繋がります。
育休取得をを会社の負担と考えるのではなく会社を強くするものだと考え、取得しやすい職場環境づくりを推進していきましょう。

 

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